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■涙の夏休み物語(中編)



こうして毎年イヤな夏休みであったが、中でも思い出すのは、

たしか小学校4年くらいの夏休みの時であった。





もうすでに、夏休みはあと一週間ほどで終わりにさしかかっていたある日、

私はまだ絵画と工作と読書感想文が出来ていないことをとても気にしていた。





絵画と工作は、テーマが決まっていた。





今年のテーマは、絵画が 『 海の思い出 』

そして工作は 『 観覧車 』であった。





まず絵画である。




 
海の思い出なんていっても、海水浴には行っていなかった。

友達とプールに2回くらい行っただけである。





海に思い出なんてないのだ。




 
困り果てた私が、母に相談すると、

「今から早く海に行って思い出作って描きなさい。」

などと無茶なことを言い出した。
 




あんぐり口を開けていると、とりあえず車で海に連れて行ってやると言う。





今から一人必死に海で泳いで思い出を作り、

それを絵にしなければならない。






とりあえず私は急いで、服の下に水着を着用し、

画用紙と絵の具を持って車に乗った。





しかし、日々の宿題に疲れていた私は、車に揺られながらあっという間に眠ってしまい、

母に起こされ目が覚めた。






「海に着いたよっ!!起きなさい!」






磯の香りとともに目覚めると、

そこは海辺であったが、私が想像していた海ではなかった。








小さな漁港であった!

釣り船がたくさん停泊している。







 
唖然としていると、

「はい、さっさと絵を描きなさい!」 と母が命令した。






「海水浴は?」

「そんなもんする暇ないでしょ。

海ならいいんでしょ。海の思い出でしょ!」







ちっともよくなかったが、言い出すときかない母なので、

しかたなく釣り船を描くことにした。






しかし、船が何隻も並んだ絵なんて難しくて描けない。





 
とりあえず、通常とは逆に背景の空を、水色をべた塗りして描き始めた。

実際は曇り空で、空は灰色であったが、まあよい。
 





しかし、そんな私を許さない者が横にいた。





 
「ありのままを描きなさいっ」

と命令し、水色の上から灰色で空を塗ることを命じた。






その後いつまでたっても空ばかりしか描かない私に業を煮やした母は、









「貸しなさいっ!!」








と言って、私から画用紙と絵の具をふんだくり、漁船を描き始めた。

シャッシャッと細筆で輪郭をとりながら、黙々と漁船を描いている。






暇になった私は、ついでに持ってきた読書感想文用の本を読みながら待っていた。

そして2時間近くたって母が描いた漁船が完成した。






「どれどれ....」 と見に行くと、

そこには、私が描いたべた塗りの灰色の空の下に、



プロ級に写実的な漁船が3隻停泊していた。






しかも漁船の下には、漁船が水面に写った海が細筆で細かく描いてある。






 
「うわぁ~~っ」

という声を出したまま、私が固まっていると、







結構うまいやろ! ( * ̄ ≧ ̄)ハナターカダカ!」

と母が自信満々に言った。




 
そして母はいい仕事をしたっ!という満足感漂う汗をハンカチで拭いた。






完璧にやり通させる!という子供に対する母の目標は

もはや忘れ去られているようであった。

 




私は、自分が描いた空とのギャップに、かなり気持ちが引いたが、

文句を言うと後が怖いし、自分で最初から描き直す気力もなかったので、

とりあえず 「あ、ありがと...」 と礼を言って、家路に着いた...。





涙の夏休み物語(後編)へつづく




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by season-maro1 | 2004-08-28 08:53 | 栄えあるオマヌケぴーぷる
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